スギをはじめ木材は便利で手軽な建築材料として古くから住宅や家具などとして親しまれています。
最近では、エコロジーの潮流を受け、木材は再生産が可能であり製造時に排出する二酸化炭素が他の建材に比較 してきわめて少ない温暖化対策の優等生として関心が高まっています。
木の空間にいるとあたたかみや落ち着きを感じます。
その心地よさには、見た目だけでなく環境を快適に保ったり、安全で健康な暮らしにもつながる科学的な背景があるからです。
市民や児童の木材に対する親しみや木の文化への理解を深めるために、多様な関係者が連携・協力しながら、材料としての木材の良さやその利用の意義を学ぶ、「木育」ともいうべき木材利用に関する教育活動を推進する。 〜森林・林業基本計画(抜粋)〜
最近は生活の洋式化や代替品の進出により、身近な生活用品から木材、とりわけ国産材の利用が減っています。また、住環境の変化、プラスチック製品等の普及により、木製品が生活の中から減少しています。また、趣味の多様化、インターネットや家庭用ゲーム機等の普及により、日曜大工や趣味の木工芸などを行う人口が減っており、それらの材料である木材からも疎遠になる傾向となっています。
適切に管理された森林から伐採された木材を使うことは、森林の整備に貢献するだけではなく、地球温暖化の防止や大気・水・土壌などの環境の維持に貢献します。
しかし、環境や健康に関心があっても、木材に触れる機会が減っていることから、木材を使う意義についての認識が低い傾向になっています。
このような観点から、平成18年9月に閣議決定された「森林・林業基本計画」において、市民や児童の木材に対する親しみや木の文化への理解を深めるため、材料としての木材の良さやその利用の意義を学ぶ教育活動を「木育」と呼称・推進することが明記されました。
マウスを使った実験によると、木製の飼育箱(ゲージ)で飼ったマウスの方が金属やコンクリート製ゲージのマウスより長生きでき、良く成長することがわかりました。
また、ある高齢者福祉施設での調査では、木材を沢山使った施設の方がインフルエンザやケガ、不眠などの発生率が低いという結果が報告されています。
人にやさしい木の空間に暮らすことが、健康で長生きできる秘訣かもしれません。
入居者の心身不調の内容 | 対入居定員比 (%) | |
---|---|---|
木材使用の多い施設 | 木材使用の少ない施設 | |
インフルエンザ覆患者 | 16.2 | 21.4 ※ |
ダニ等でかゆみを訴えた入居者 | 4.4 | |
店頭により骨折等をした入居者 | 8.0 | 12.1 ※ |
不眠を訴えている入居者 | 2.4 | 5.3 ※ |
※は有意差(Pa001)の認められたもの
資料:全国社会福祉協議会「高齢者・障害者の心身機能の向上と木材利用・福祉施設内装材等効果検討委員会報告書」、調査期間は平成9年12月から平成10年1月。
スギをはじめとする木に含まれる成分には、私たちを落ちつかせる効果があるといわれています。
みなさんもご存知の森林浴、この主成分といわれているフィトンチッドを使った実験で血圧も下がり、脈拍も落ち着く実験結果が出ています。
木のある空間はリラックスできる環境であるといえます。
スギなどの木材は衝撃を吸収する働きがあり、他の床材よりショックが少なくてすむやさしい素材です。また、空気中の湿度をコントロールし、夏涼しく、冬温かい住環境を提供してくれます。
その他、光が目に与える刺激を軽減したり、音をバランスよく吸収するなど、やさしく心地よい環境づくりに最適な素材といえます。
ある集合住宅の床をカーペットから木のフローリングに改装したときの調査で、アレルギーの原因のひとつともいわれるダニが減少したという結果がでました。
木材の調湿効果や木材に含まれる成分が有効に働くと同時に、生息に適したすき間がなくなったことが理由だと思われます。
健康な暮らしにも木は大いに役立っています。
二酸化炭素(CO2)は、地球温暖化の原因となる温室効果ガスのひとつです。
スギは太陽エネルギーの働きにより、二酸化炭素を吸収して成長し、製材品などに加工された後も、燃やされたり、腐朽するまで吸収した二酸化炭素を固定し続けます。
注
01. アイコンの下の文言は、我が国の森林の循環利用との関わりにおいて期待される主な効果等を記載したものであり、各ゴールの解説ではない。
02. このほか、ゴール1は森林に依存する人々の極度の貧困の撲滅、ゴール10は森林を利用する権利の保障、ゴール16は持続可能な森林経営を実施するためのガバナンスの枠組みの促進等に関連する。
03. これからの様々な取組により、ここに記載していない効果も含め、更にSDGsへの寄与が広がることが期待される。
出典 林野庁「令和2年度版 森林・林業白書」
木材の加工に要するエネルギー消費量は、アルミニウムや鉄製品の製造・加工に比べて非常に少なくてすみます。
解体材は再利用可能で、焼却すれば化石燃料の代替えにもなります。焼却時に二酸化炭素が発生しますが、それは大気中と木の間を行き来しているだけで、森林がある限りは、大気中の二酸化炭素が増えることはありません。
木材は環境にやさしい省エネルギー素材といえるのです。
資料:大熊幹章 木材工業53-2(1989)
※数値の合計は四捨五入のため必ずしも一致しない
出典:令和2年木材統計
※数値の合計は四捨五入のため必ずしも一致しない
出典:令和2年木材統計
四捨五入の関係で合計は一致しない
出典:第八次宮崎県森林・林業長期計画
四捨五入の関係で合計は一致しない
出典:第八次宮崎県森林・林業長期計画
みやざきスギは比較的柔らかいことから、「弱い木材?」という評価が一般に定着しているようです。
しかし、実験結果からスギの実大材は、むしろ「強い」材料であることが分かりました。
「表面割れ」とは、木材が乾燥する過程で発生する木材表面の割れのことです。
心持ちの表面割れ材は、表面割れのない材に比べて、曲げ強さも曲げヤング係数(曲がりにくさの度合い)も表面割れ率が高いほど高くなっています。
つまり、表面割れは曲げの強さに影響しないことが分かります。
表面割れの長さと強度の実験
表面割れ率:材長に対する表面割れ長さ
宮崎県のスギの品種は、ほとんどがオビスギです。オビスギは、昔からシロアリの被害を受けにくいと言われ、家の土台や柱に使われてきました。
オビスギをホワイトウッド、レッドウッドと並べてシロアリの食害比較実験を行った結果、ホワイトウッド、レッドウッドに比べ、食害度が低く、シロアリに対するオビスギの強さが確認されています。
野外でのシロアリ食害比較実験(平成14年10月:宮崎市一ツ葉海岸にて)
スギに含まれる油(精油)はアロマテラピーに使われるなど、穏やかで良い香りがします。
しかし、シロアリはこの匂いが嫌いで寄りつかないのです。
ゴキブリの忌避実験
精油含浸率 | ダニ忌避率 |
---|---|
0.5% | 24.7% |
1.0% | 34.9% |
5.0% | 94.6% |
JISL 1920に準拠。ヤケヒョウダニを用いた。
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※ブルネル賞とは鉄道に関係する国際的なデザインコンテストです。
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